◆小規模持続化補助金(コロナ特別枠)編:「お金が欲しいので、やります!」◆
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「お金が欲しいので、やります!」
私の唯一の楽しみである”ランチタイム”。お弁当は具沢山で、午後からの活力をつける。この至福の時こそ、私が一日の中で最も大好きな時間だった。
「あのー、私、田村と申します。小規模事業者持続化補助金について聞きたいんですけど、いいですか?」
なんでだよ(笑)
あろうことか、事務所のテラスで食べている私に直接声をかけるとは。昼休憩を何だと思っているんだ。
「いま食事中なのですが…。お急ぎですかね?他にも職員が事務所にいるはずなのですが。」
「事務所に行ったのですが、”テラス席で食事をとっている職員が主担当です”って言われました。なのでお伺いしました。食事中すみません。」
”主担当”ってなんだよ。そんなものはない(笑)
「あ…(モグモグ)。すぐ行きますので(ゴックン)、事務所でお待ちください。」
こうして私は、本日の生きがいを失った。
「お待たせいたしました。持続化補助金についての問い合わせということで、現在の状況をお聞かせ頂ければと思います。」
「ありがとうございます。あの、米粒ついてますよ。」
とっさに口元についた米粒をとる。あとで他の職員の机につけてやろうか。
「実はこの補助金のコロナ型?っていうのがあると聞いて。なんでも上限100万円でお金がでるとのことでしたので、ぜひ申請できればと思い、お伺いしました。計画書の作成はこれからで、なんとか第2回目の〆切(R2.6/5)に申請したいと思っています…。こんな感じでよろしいでしょうか?」
なるほど。恐らく、私の見立てはこうだ。
”田村さ~ん、最近お店の調子どーお?ワタシ(近所の美容室の人)、今回のコロナでグッズの販売に力を入れようと思って、ホームページ製作をかけたの!ところがどっこい!なんと!100万円補助が出るって制度使ったから、お得にできちゃったわけ!すごいでしょ~!」って感じだろうな。申請がギリギリになるわけだ。
「なるほどです。申請される経費は、どのような内容でしょうか。」
「はい。今回はコロナで対面営業が難しくなったので、グッズ販売の案内をホームページ・チラシで広めていく投資をしようと思っています。あと、マスクとか消毒液とかも購入しようと思っています。確か、上限も3/4になるとか?」
田村さんはよく調べられている。直近で、対象経費内容が拡充されただけでなく、補助率が変わっていることも抑えている。
「仰る通りです。それら全て対象になります。ただし、申請〆切が6/5必着ですので、非常に厳しいスケジュール感で動く必要があります。営業上、その点は問題なさそうですか?」
今日も午前中に、同様の相談が2件ほどあった。いずれも”間に合いそうにないので、、第3回の一般型で申請します”という回答だったが。
「お金が欲しいので、やります!」
…。うん、良い意味で期待を裏切ってきた。
「私も、応援します。ではまず、こちらの計画書のテンプレートをご参考ください。概ねこれに準ずるような形で、計画書を作成して頂ければと思います。業種や経費内容を変える等、ご自身の言葉で作成してください。」
「これ、このまま真似してもいいですか?」
持続化補助金の計画書はコンサルタントや行政書士等が作成代行するケースが多いものの、実は直近で”模倣計画書”や”内容がまったく同一の計画書”が事務局に提出され、物議をかましている。恐らく同一のコンサルタント等が作成されたものだろうが、言うまでもなく”それらの計画書は不採択”となる。基本的に模倣はNGなのだ。
「駄目です。公募要領にも”ご自身の言葉で作成”を進められているぐらいですから、あくまで参考程度にお願いします。」
「わかりました…。私、こう見えても”お金には目がないので”、絶対やってやりますよ。お兄さん、どうせ内心では、6/5申請は無理だと思っているでしょう?」
”まぁ、無理でしょうね”とは言えず、一度飲み込む。
「いえ、田村さんなら計画作成は間に合うと信じています。私も様式3を発行して、お待ちしておりますので。期待しております!」
…2日後。
田村さんからメールが送られてきた。
メッセージには「あきらめました。」の記載と”9割空白の計画書”が添付されていた。
…。私のランチタイムを返せ。