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◆起業編「俺、経営者になりたいんです!」◆


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「俺、経営者になりたいんです!」

 

5月はとても過ごしやすい気温が続いている。”コロナ禍で事業継続が厳しい”という声をよく耳にするが、なんとか経営支援を手掛けたい今日この頃。

 

「あのー、創業相談って、ここでいいんですかね?」

眼鏡をかけた弱腰の青年が、商工会議所に訪ねてきた。20代前半ぐらい、大学生だろうか。

 

「あ、今回初めてですね。私がお伺いいたします。最終的には診断士等の専門家にお繋ぎすることになりますが、どのようなご事業をされるか、事業計画等も含めてお聞かせいただければと思います。こちらへどうぞ~。」

経験上、若手の創業はサービス業(飲食店や代理店営業)かフリーランス等に絞られる。さぁ、この方はどうくるか…。

sogyotecho.jp

「初めまして、○○大学に通う土井(ドイ)と申します。実はタピオカ店を開業しようと思っていまして、こちらに行けば色々教えてもらえると聞いて飛んできました。」

ん?タピオカってブーム終わったんじゃないのか?”タピル”って死語だよね?

 

「えーっと、ちなみに教えてもらったのは大学の先生等ですか?」

「いえ、市役所です。」

しばくぞ役所。実は機関柄、市役所は創業・経営関係全般を商工会議所に振る傾向がある。まったくもって迷惑な話だ。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

「承知いたしました。ぜひ中身の部分をお聞かせいただければと思います。開業予定はいつ頃でご検討されていますか?」
「一応、今月のバイト代で貯金が30万円ぐらいになるので、最初はこじんまりと営業していこうかと思います。なので、今月末ぐらいからの開業ですね。」

こいつはどこに店を出すつもりなんだ…。タピオカ専門店って、駅前立地以外で流行るのか?

 

「おそらく手元資金30万円で経営は、難しいかなと…。ご融資もお考えですよね?」

「できれば借金はしたくないんです。でも、30万円で厳しいのなら、やはり検討すべきですよね。」

いますぐタピオカ専門店に怒られてこい。(笑)

www.fc-hikaku.net

「厳しいというのは、月額の固定費(家賃・広告費等)や仕入れ諸経費で、ほとんど資金ショートする規模かなという推測です。もちろん、どれぐらいの売上金額を目指しているか、人を雇うのか等にも起因しますが…。」

「なるほどなるほど。であれば、融資は考えないとですね。ぼくのような者だと、いくらぐらい融資できるんですか?」

 

「日本政策金融公庫の”新創業融資”という制度が利用できます。まだお若いですし、綿密に事業計画書も作成されるのであれば、概ね妥当な金額の借入ができるのではないかと。」

「1000万円ぐらいでますかね?」

とんでもない数字がでてきて鼻水がでる。どこから1000万円(笑)そして青年がソワソワしだした。

新創業融資制度のご案内|日本政策金融公庫

 

「タピオカ専門店の開業は、お急ぎの理由があるのでしょうか?」

「はい…。俺、経営者になりたいんです!小さい頃からの夢で、1日でも早く、経営者になってお金儲けができればと思っています!」

大学の経営学では、簿記とか習わないのかな…。もう勢い出店だな。

 

「意思はお察しいたします。しかし、事業計画案もなければ、資金繰りも潤沢にあるわけではないですよね。出店にあたっては前金と月額家賃で、このあたりだと50万円弱はとんでいきます。施工にも約300万円程発生します。店舗を出す前に生活ができなくなることが目に見えています。」

「そっか…そんなにお金がかかるんですね。よく駅前にあるタピオカ店も、やはりそれぐらいお金をかけて営業しているのでしょうか。」

 

「はい、箱は小さいですが。借入をすること自体が”悪”ではなく、売上が立っていくなかで徐々に返済していけばいいんです。そのために金融機関では”据え置き”という制度があります。」

「ということは、まず僕がすべきことは”事業計画”を作るということですね?」

「仰るとおりです。そして私たちもブラッシュアップをかけますし、日本政策金融公庫という金融機関におつなぎいたします。ぜひ土井様の夢、叶えましょう!」

www.jfc.go.jp

こうして土井さんは、満足気に商工会議所をあとにした。創業支援のテーブルに乗せる以前のお話だったが、この不況下でも”開業したい”という前向きな意思があることに感銘を受けた。

 

土井さんの”タピオカ専門店”の開業支援は、つづく。